第53回離婚弁護士コラム 子の連れ去りは違法となるのか?

離婚の際にしばしば問題となるのが「子の連れ去り」問題。離婚後、親権者とはならなかった元配偶者が無断で子を連れ去るのはもちろん、親権争いを有利に進めるために離婚前に無断で子を連れ去る行為も、ケースによっては違法と判断される場合があります。今回のコラムでは、子の連れ去り行為は、違法となるのかについて解説したいと思います。

離婚後の連れ去り

離婚時には、夫婦のどちらが親権者となるのか決める必要があります。そして、親権者となった親は、自身の子を手元に置いて養育監護する権利=監護権を有します。

離婚後、監護権を有しない元配偶者が子どもを連れ去る行為は、監護権者の監護権を侵害し、子どもの安定した養育環境を実力で変更し破壊する行為と言えますので、違法性が認められ、損害賠償等の対象となります。

刑事上も、監護権を有しない元配偶者が、監護権のある者から子どもを連れ去る行為は、未成年者略取誘拐罪(刑法第224条)、いわゆる誘拐罪という犯罪に問われる危険性があります。なお、誘拐罪は、親権者の監護権を侵害している以上、たとえ子どもの同意があっても犯罪となりますので注意が必要です。

 

離婚前、別居後の連れ去り

離婚前であれば、夫婦の双方が親権者(共同親権)となっているため、連れ去る側にも監護権があります。

しかし、「子の連れ去り」行為は、相手の監護権を侵害することには間違いないし、平穏な養育環境を侵害する行為にもなりますので、その意味では違法性が認められます。

同様に、別居時に連れ去られた子どもを実力で取り返す行為も、相手の監護権を侵害し、一応平穏な養育環境を侵害する行為となりえますので、自力救済は控えるべきと言えます。

ただし、子どもが虐待されているなど、子の身に危険が及ぶような場合には、そのような子を救う行為に違法性は認められません。DVや虐待等により子どもの身に危険が迫っている場合には、人身保護請求や警察による介入も可能となりますので、すぐに弁護士や警察等の関係機関に相談することが重要です。

 

離婚前、別居時の連れ去り

離婚成立前に、夫婦が別居するというケースは珍しくありません。また、その際に、子どもを連れて出て行くというケースも非常に多く、そのようなケースでは、直ちに違法性があるとは判断されにくい傾向にあります。

別居の際に、子どもを連れて平穏に出て行くような場合には、子を連れ出すことにも一応同意しているとも言えますし、また、子どもを連れて帰省中にそのまま帰ってこないというようなケースでも、連れ出す態様は平穏ですし、監護養育環境を破壊するような一方的な変更とも言い難いからです。

ただし、もちろん、無理矢理子どもを連れ出して別居する行為や、不意打ちや騙し討ち的に子を連れ去るケース、例えば、他の配偶者に無断で保育園等に迎えに行って、そのまま連れ去って出て行くというようなケースでは、違法と判断される可能性もありますので注意が必要です。

 

おわりに

今回のコラムでは、子の連れ去り行為は、違法の対象となるのかについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。

子の連れ去り行為が、違法=損害賠償の対象となるのかどうかについては、最終的には、同居中の監護状況や連れ出しの態様、連れ去りに至った経緯等を総合的に考慮し、違法性が判断されることになり、法律的な専門知識が必要となりますので、一方的に子を連れ去ることは控え、連れ出したい場合には、弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。

また、本コラムで解説したように、連れ去られた子を取り返す行為も違法な行為となりえますので、子を取り返したい場合にも、専門の弁護士に相談することをおすすめします。

なお、連れ去れた子を取り返す方法について詳しくは「第50回離婚弁護士コラム 子どもが配偶者に連れ去られた場合、子どもを取り返すにはどうしたらいいのか」をご覧ください。

当事務所では、『チルドレン・ファースト』の理念の下、子の連れ去り、子の引き渡し問題に積極的に取り組んでおります。離婚問題のみならず、子の引渡し、監護権者指定、審判前の保全処分等について、多くの実績と経験のある弁護士が、皆様のお悩みに真摯に対応いたします。相談は初回無料となっていますので、お気軽にご相談ください。