熟年離婚のメリット・デメリット

そもそも熟年離婚とは

熟年離婚とは、11年前(平成19年4月1日)より「年金分割制度」がスタートしたことや団塊の世代が定年退職を迎えたことで、熟年層の離婚が増えてきたため、できた言葉です。 専門用語としての「熟年離婚」という言葉はないのですが、一般的にいう熟年離婚とは何かを説明すると

・概ね婚姻期間が20年以上ある
・当事者の年齢が50歳以上である
の夫婦が離婚する場合が該当すると言えます。

 

世間的には熟年離婚という言葉がよくつかわれるになり、比較的前向きなイメージが先行し、そのため昔より離婚のハードルが下がっている傾向にあるといえるでしょう。ただし、実際に熟年離婚をお考えの方は、そのメリットとデメリットをしっかり把握して検討する必要があるといえます。

熟年離婚のメリット
・長年の夫婦生活の解消による精神的な自由が得られることが挙げられます。
 子どものために今までずっと我慢してきたが、子どもの自立を機に離婚するという妻側の声がよく聞かれます。もっともこれは、熟年離婚に限ったことではありませんが、夫婦生活が長いこともあって若年者の離婚より精神的な解放感は多く感じるように思われます。
・年金分割制度により、経済面で離婚に踏み切りやすくなったことが挙げられます。
 平成19年4月1日より開始した「年金分割制度」により、婚姻期間中の夫の厚生年金加入分に対して、原則1/2を妻も受け取ることができるようになりました。
 これにより将来の収入や年金に対する不安要素が緩和され、離婚に踏み切りやすくなったといえます。
熟年離婚のデメリット
・年金受給後の収入が減る
年金分割制度は、あくまで今までの年金記録を分割するものであり、誤解をおそれずいうならば、過去にさかのぼって年金を多く支払っていたものとする制度です。
もっとも、当然ではありますが、夫婦の場合、厚生年金+2人分の基礎年金を合算した金額で生活ができるため、離婚後に受け取る年金額は少なくなります。
・財産分与による今ある財産の減少。
 熟年離婚の場合、婚姻期間が長く、その分、財産分与の金額も大きくなる傾向があります。さらに不動産や家財道具などの固定資産を分割する際には代償金を支払う必要も出てきます。一般的には、熟年離婚の場合、夫から妻に支払われる金額が大きくなるケースがほとんどです。
・裁判所の傾向としては、熟年離婚を認めにくい傾向がある
相手方が離婚に同意していた場合は格別、単なる離婚をしたいとの理由に基づいて離婚することは(裁判で離婚が認められること)、難しいです。
世間的には熟年離婚という言葉が有名になってきたとしても、裁判所はあくまで法律に基づき判断します。
 しかも熟年離婚の場合は、離婚後の経済的困窮予防を考えて、認めない判断をする傾向にあると思われます。

 

 

熟年離婚については、離婚事件に多い、子どもの問題は少ない分、経済的な問題が生じる場合があり、実際に離婚したらどうなるのか、安心して離婚するためにはどうすればいいのか、事前に入念に準備をしていくことが大切です。