第3回離婚弁護士コラム 意外と知らない!?離婚における宝くじ当選金の取り扱い

離婚の際には、財産分与というものがあり、結婚期間中に夫婦が共同で築き上げた夫婦共有の財産を離婚時に清算して2人で分けることになります。この財産分与では、基本的には、別居時又は離婚時に双方が有している夫婦共有財産をそれぞれ2分の1になるように分けることになります。

では、夫婦の片方が宝くじを買っていて、離婚前に多額の当選金を得た場合、当該当選金は財産分与の対象になるのでしょうか。

 

財産分与の対象外のもの

財産分与の基本事項ですが、全ての財産が分与の対象になるわけではありません。親の相続発生に伴い取得した財産や独身時代から元々もっていた財産など、夫婦二人で築き上げたとはいえない財産は、財産分与の対象にはなりません。

 

結婚期間中の宝くじの当選金

結婚期間中の宝くじの当選金は、果たして財産分与の多少となる共有財産と言えるのか。ここで宝くじ当選金と財産分与に関する裁判例をご紹介いたします。この裁判例は結婚中に夫がお小遣いから購入した宝くじが、2億1000万円の当選をしたという事案です。

 

裁判例1

一審平成28年9月23日前橋家裁高崎支部審判(判時2360号8頁、参考収録)は、
「宝くじは、その射倖性により購買者を吸引し、その売上金から当選金等を控除した金員を、地方財政の一助とするものといえる。こうした宝くじの法的性格及び役割に照らせば、当選した宝くじの購入資金の原資が夫婦共有の財産である家計の収入であるとしても、当然に全額が夫婦の共有財産となるものではなく、当該宝くじを購入した者には、当該当選金について一定の優位性ないし優越性が認められるべきである。」としています。

上記裁判例は、宝くじ購入の原資が夫婦共有財産である家計の収入であったとしても、当選金が当然に夫婦の財産になるのではなく、購入した一方に一定の優位性が認められると判断し、大部分が購入した(当選した当事者)の固有財産と判断しました。

 

裁判例2

しかし、上記一審の抗告審(平成29年3月2日東京高裁決定(判時2360号8頁))では、「本件当選金を得たCの購入資金は、原審申立人と原審相手方の婚姻後に得られた収入の一部である小遣いから拠出されたこと、本件当選金の使途も、同人ら家族が自宅として使用していた本件土地建物の借入金約2000万円の返済に充て、原審相手方が勤務先を退職してからは、毎月、本件当選金を原資として生活費相当分を拠出したこと等が認められる。そうすると、Cの購入資金は夫婦の協力によって得られた収入の一部から拠出され、本件当選金も家族の住居費や生活費に充てられたのだから、本件当選金を原資とする資産は、夫婦の共有財産と認めるのが相当である。」として、当選金も夫婦共有財産と認定し、結果、夫:妻=6:4の割合で当選金を分与するのが相当と判断しています。

上記裁判例は、宝くじ購入原資が家計支出(お小遣い)から支出されたものなので、共同で購入したような場合であれば、より共有財産であることが認められることになり、2分の1に近づくと思われます。

 

離婚弁護士の考え

個人的には、宝くじや競馬などのギャンブルは、通常、お小遣いや家計支出の一部が原資となることが多く、その購入原資が夫婦共有財産であるならば、財産分与の対象になると思われます

財産分与の趣旨が夫婦で築き上げてきた財産の清算というものである以上、事業投資などは別にして、一般の方が購入する宝くじや競馬などの購入原資は夫婦共有財産であることがほとんどでしょうから、取得した金銭も共有財産となるとするのが相当と思います。

宝くじに当選するというのは珍しいケースではありますが、当事務所の弁護士は、様々な離婚問題に対応いたします。