第34回離婚弁護士コラム 配偶者から家庭内暴力(DV)を受けている方に知って欲しい保護命令制度について

当事務所は、離婚問題に強い法律事務所として、長年札幌で数多くの離婚案件に携わっておりますが、「配偶者から暴力を受けている」という相談が後を絶ちません。今回のコラムでは、家庭内暴力、DVを受けている方に是非知っておいて欲しい、保護命令制度というものについて解説したいと思います。

 

保護命令制度について

配偶者やパートナーから、暴力を受けている方を守るための制度として保護命令制度というものがあります。

保護命令とは、配偶者やパートナー等から暴力を受けている場合に、被害者の申し立てにより裁判所が加害者に発する命令のことをいい、その内容として、接近禁止命令・退去命令、電話等禁止命令などがあります。

簡単に言うと、例えば、夫から暴力を受けているというような場合に、裁判所が妻を守るために保護命令として「妻へ近付くのを禁止する」という命令を夫に出してくれるということです。

この裁判所の発する命令に違反すると、違反者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられることになりますので、夫は妻に近づくことができず、暴力を振るうこともできなくなります。

 

保護命令の種類

接近禁止命令

「接近禁止命令」は、被害者の身辺をつきまとったり、被害者の住居・勤務先など、被害者が通常利用する場所の近くをはいかいすることを禁止する命令になります。接近禁止命令の期間は6ヶ月になります。再度の申し立てにより延長も可能です。

 

退去命令

「退去命令」は、同居している住居からの退去及びその住居の付近での「はいかい」を禁止する裁判所の命令になります。有効期間は2ヶ月間で、やむを得ない場合には、再度の申立ても可能です。「接近禁止命令」とは異なり、期間が短く、再度の申し立てに「やむを得ない」事情を要求するのは、退去させられた者が、その期間、住む場所を失ってしまうことへの配慮となります。

その期間内に、避難可能なシェルター等を探し、別居の準備等を進めるのが通常になります。

 

電話等禁止命令

「接近禁止命令」とともに、面会の要求や、電話やメールで連絡することを一定の範囲で禁止することもできます。

 

保護命令が認められる要件

保護命令が認められるためには、「配偶者から、身体に対する暴力または生命等を害する脅迫を受けたこと」が必要であり、また、「今後も更なる暴力により、生命や身体に重大な危害を受けるおそれが大きいこと」が必要です。

「配偶者」というのは、婚姻届を出している法律婚に限らず、いわゆる事実婚の内縁関係のパートナーであっても大丈夫です。

暴力は、基本的には「身体的な暴力」に限られ、モラハラなどの「精神的な暴力」では保護命令は認められないのが現状です。モラハラによっても、精神的なダメージを受け、いわゆるPTSDや「うつ状態」に陥る危険性があるため、法改正の議論もなされていますが、現段階では残念ながら認められていません。

「今後も更なる暴力により、生命や身体に重大な危害を受けるおそれが大きいこと」かどうかは、将来のことなので、ケースバイケースで判断されることになりますが、例えば、「暴力から逃げて別居したのに、頻繁に新居に訪れてつきまとってくる」、「勤務先の前で待ち伏せしている」などの事情があれば、今後も暴力を振るわれる危険性がありと言えます。

また、「子の連れ去り」を防止するために、子どもへの接近禁止命令を求めることも可能で、その場合には、「幼年の子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っていることその他の事情があること」が必要となります。「保育園や幼稚園の前で待ち伏せ」していたり、「子どもに会わせろ」などと強要してきた場合に認められます。

 

暴力を受けたらすぐに相談する

保護命令自体は、裁判所に申し立てるのですが、暴力を受けた場合には、まずは、配偶者暴力相談支援センターや警察などにすぐに相談することが大切になります。

上記の機関に相談すると、その旨を裁判所への申立書に記載する欄があり、宣誓供述書の提出を省けるため、その後の手続きがスムーズとなります。

 

配偶者暴力相談支援センターを探すのはこちら
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/soudankikan/01.html

 

保護命令後の生活や離婚で不安のある方は弁護士へ相談

保護命令により、一時的に安全が確保されたとしても、その後の生活費のことや、恐らく争いになるであろう離婚交渉のことを考えて、躊躇される方も多いのではないでしょうか。

そのような場合には、同時に、婚姻費用の分担請求として、相手から生活費を請求したり、弁護士に離婚に関する交渉を任せるといった手段をとることも可能です。弁護士に交渉を任せることによって、自身は、暴力を振るう配偶者との交渉から解放され、安心して次の生活に向けての準備をすることができます。

当事務所では、初回無料にて離婚問題や暴力を振るう配偶者についての相談を受けております。お一人で悩まずに、まずはお気軽にご相談ください。

 

参考:当事務所の解決事例
【解決事例】モラハラ、DV夫から別居して、訴訟により離婚成立が認められた事例