第55回離婚弁護士コラム 親権を放棄することはできるのか?親権の辞任・変更について解説

前回のコラムでは、離婚の際に、親権の押し付け合いがあった場合でも、夫婦のどちらかが必ず親権者になる必要がある旨解説しました。では、望まず親権者となってしまった場合に、親権を放棄したりすることはできるのでしょうか。今回のコラムでは、親権の辞任や変更について解説したいと思います。

 

親権の放棄はできない

親権とは、子の利益のために子の監護や教育を行い、その子の財産を管理する権利・義務のことを言います。

親権は、権利であると同時に義務でもあるので、勝手にそれを放棄するということはできません。

ただし、やむを得ない事情がある場合には、辞任したり変更することが可能です。

 

親権の辞任

親権を一方的に放棄するようなことはできませんが、やむを得ない事情がある場合には、家庭裁判所の許可を得て、辞任することができます。

「やむを得ない事由」というのは、単に「子どもをきちんと育てる自信がない」、「経済的な余裕がない」というような、主観的な事情では認められないのが一般的です。

例えば、犯罪行為によって服役していたり、重病を患い長期入院している等、客観的に判断して、親権を行使することができない状況にある必要があります。

上記のような客観的に親権を行使することができない事由があると認められ、裁判所の許可を受けて初めて親権を辞任することができます。

民法第837条
1. 親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる。
2. 前項の事由が消滅したときは、父又は母は、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を回復することができる

 

親権の変更

親権を一方的に放棄するようなことはできませんが、元配偶者等に、親権者を変更することができます。

ただし、親権者を変更する場合にも、家庭裁判所の許可が必要となります。たとえ、当事者間で、親権の変更について合意が形成されていたとしても、裁判所の許可がなければ変更することはできません。

あくまで「子の利益になるか」という観点から、家庭裁判所が決めることになります。一般的に、裁判所は、一度決めた親権者を変更することには消極的ですので、やむを得ないとまでは言えなくても、それ相応の理由が求められるのが普通です。

 

おわりに

今回のコラムでは、親権の辞任や変更について解説しましたが、いかがだったでしょうか。親権は権利であると同時に義務となりますので、一方的に放棄することはできません。やむを得ない事情がある場合に、辞任や変更が可能ではありますが、その場合でも、家庭裁判所の許可が必要となり、「子の福祉に適うかどうか」という観点から判断されます。

子の福祉という観点からは、親権者の変更はなるべく控えるべきではありますが、親にも親の事情があるかと思います。親権の辞任・変更等で悩まれている方は、まずは親権問題に明るい弁護士に相談することをおすすめします。

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