第69回離婚弁護士コラム 離婚のお金の話を整理します|財産分与・養育費・慰謝料の違い

離婚を考え始めたとき、多くの方が真っ先に不安を感じるのが「お金」の問題ではないでしょうか。

財産分与、養育費、慰謝料――離婚に関わるお金の話は複数あり、それぞれ意味も性質も異なります。しかし、これらが一度に話題に上がるため、一般の方にとっては混同しやすく、「結局、何がもらえるのか分からない」「何を請求すればいいのか分からない」と感じてしまいがちです。

実際、お金の整理ができないまま離婚の話を進めてしまい、後になって「そんなつもりではなかった」「知っていれば違う選択をしたのに」と後悔されるケースも少なくありません。

今回のコラムでは、離婚に関わる代表的なお金について、それぞれの違いと考え方を、できるだけ分かりやすく整理していきます。

 

離婚に関わる「お金」は大きく分けて3つあります

離婚の際に問題となるお金は、主に「財産分与」「養育費」「慰謝料」の3つです。この3つは、同じ「お金の請求」であっても、発生する理由や目的がまったく異なります。

簡単に言えば、
▪️財産分与は「夫婦で築いた財産を分ける話」、
▪️養育費は「子どもの生活と成長を支えるためのお金」、
▪️慰謝料は「精神的な苦痛に対する損害賠償」
です。

この違いを理解せずに話を進めてしまうと、「それは財産分与の話なのか、それとも慰謝料なのか」といった点が曖昧になり、無用な対立や誤解を生む原因になります。まずは、それぞれがまったく別の制度であるという点を押さえておくことが大切です。

財産分与とは何か

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚時に分け合う制度です。名義がどちらになっているかは、必ずしも重要ではありません。預貯金や不動産、車なども、実質的に夫婦の協力によって形成されたものであれば、財産分与の対象となります。

よく「専業主婦(主夫)だから財産分与はもらえないのでは」と心配される方がいますが、そのようなことはありません。家事や育児を担うことも、経済活動を支える重要な役割と考えられており、原則として、財産分与は公平に行われます。

もっとも、「必ず半分もらえる」と単純に考えるのも危険です。財産の内容や形成過程、負債の有無などによって、分け方が調整されることもあります。財産分与は、「生活を清算するためのお金」という位置づけであることを理解しておくとよいでしょう。

養育費とは何か

養育費は、子どもが経済的に自立するまでに必要な生活費や教育費などを支えるためのお金です。離婚後、子どもと一緒に生活しない親が、子どもを監護している親に支払うのが一般的です。

養育費の重要な点は、これは「親のためのお金ではなく、子どものためのお金」であるという点です。そのため、夫婦の感情的な対立とは切り離して考える必要があります。「離婚時に揉めたから支払わない」「相手が嫌だから受け取らない」といった考え方は、本来の趣旨に反します。

養育費の金額は一律ではなく、双方の収入や子どもの人数、年齢などを踏まえて決められます。また、離婚時にきちんと取り決めをしておかないと、後になって支払いが滞るなどの問題が生じやすくなります。

慰謝料とは何か

慰謝料は、離婚によって生じた精神的な苦痛に対する損害賠償です。ここで注意したいのは、「離婚すれば必ず慰謝料がもらえるわけではない」という点です。

慰謝料が問題になるのは、不貞行為や暴力、著しいモラハラなど、離婚に至る原因について一方に責任がある場合です。単に性格の不一致や価値観の違いで離婚する場合には、慰謝料が発生しないケースも多くあります。

また、慰謝料の金額もケースごとに大きく異なります。感情的には納得できなくても、法的に見て慰謝料が認められにくい場合もあり、この点で誤解や不満が生じやすいのが実情です。

これらのお金は同時にもらえるのか

財産分与、養育費、慰謝料は、それぞれ別の制度です。そのため、条件が整えば、同時に問題となることもあります。たとえば、財産分与を受けつつ、子どもがいれば養育費の取り決めをし、さらに不貞行為などがあれば慰謝料を請求する、といったケースです。

一方で、これらを混同してしまうと、「財産分与でもらったから慰謝料はいらないのでは」「慰謝料をもらったから養育費は請求できないのでは」といった誤った理解につながります。それぞれの性質を切り分けて考えることが、冷静な話し合いのためには欠かせません。

お金の話を後回しにすると起きやすい問題

離婚を急ぐあまり、「お金の話は後で」「とりあえず別れてから考えよう」としてしまう方もいます。しかし、この判断が後々の大きなトラブルにつながることは少なくありません。

口約束だけで離婚してしまい、養育費が支払われなくなったり、財産分与の話が宙に浮いてしまったりするケースは珍しくありません。また、離婚後の生活設計が立てられず、精神的にも経済的にも不安定な状況に陥ってしまうこともあります。

離婚はゴールではなく、新しい生活のスタートです。そのスタートを少しでも安心できるものにするためにも、お金の整理は避けて通れません。

おわりに|離婚のお金は「整理すること」から始めましょう

離婚に関わるお金の話は、一つひとつを見ると難しく感じるかもしれません。しかし、財産分与、養育費、慰謝料という3つの柱を整理し、それぞれの意味を理解するだけでも、見通しは大きく変わります。

感情が揺れやすい時期だからこそ、「何のお金の話をしているのか」を意識することが大切です。不安や疑問を抱えたまま進めるのではなく、一度立ち止まって整理することが、後悔のない離婚につながります。

離婚を考え始めたとき、「お金の話」を一人で整理するのは簡単ではありません。財産分与や養育費、慰謝料について調べるほど、かえって不安が増してしまう方も多いのではないでしょうか。当事務所では、離婚問題に精通した専門家が、あなたの状況を丁寧にお伺いし、今後の選択肢を分かりやすくご説明します。初回相談は無料です。無理に離婚を勧めることはありません。まずはお気持ちと不安を話すところから、安心してご相談ください。