第51回離婚弁護士コラム 夫婦の同居義務って何?違反するとどうなる?

夫婦は一緒に生活するのが普通ですが、夫婦関係が悪化し、「相手の顔も見たくない」という状況になると、別居を考える方も少なくありません。別居の際に注意したいのが夫婦の同居義務の存在です。相手方の同意なく一方的に別居してしまうと同居義務違反となってしまい、後の離婚等の際に不利に扱われてしまう可能性があります。今回のコラムでは、夫婦の同居義務について解説するとともに、同居義務違反があるとどうなるのかについて解説したいと思います。

 

夫婦の同居義務とは

民法第752条では、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と定められており、夫婦は同居すべき旨を規定しています。これが夫婦の同居義務です。

なんとなく夫婦は同居し、一緒に生活するのが当然と思われている方も少なくないと思いますが、夫婦が同居するのは、単に一般的な通念というだけでなく、法律上の義務ともなっているのです。

夫婦が同居するのは法律上の義務ではありますが、相手方の同意があれば、義務違反とはなりません。例えば、仕事の都合でやむなく単身赴任となったというような場合には、当然、話し合いを行いお互いの同意の上に別居となっているはずですので、そのような場合には同居義務違反とはなりません。

つまり、相手方の同意なく一方的に別居した場合に同居義務違反が問題となります。

同居義務に違反した場合のリスク

離婚請求されるリスク

同居義務に違反すると、法定離婚事由の「悪意の遺棄」にあたる可能性があります。

民法770条には、それに該当すると離婚事由になる事柄が定められおり、そのひとつに「悪意の遺棄」というものがあります。「悪意の遺棄」とは、正当な理由なく夫婦の同居義務や扶助義務に違反することを指します。

つまり、同居義務違反があると、相手から離婚請求されるリスクがあります。

 

慰謝料請求されるリスク

同居義務違反は、法定離婚事由にもあたる行為となりますので、離婚の際には有責配偶者として扱われます。ですので、離婚の際には、慰謝料を支払わなければならないというリスクがあります。

慰謝料の額はケースバイケースで判断されますが、数10万円程度から、ケースによっては100万円を超える場合もあります。

 

自分からの離婚請求が制限されるリスク

自ら同居義務違反を行った者は有責配偶者となり、その有責配偶者側から離婚を請求することは、信義に反するとして、離婚請求が制限されるリスクがあります。自分から一方的に別居しておきながら、その者から離婚請求するのは信義に反するということです。

また、同様に、別居の際には、通常、婚姻費用として、収入の高い相手方配偶者に対して生活費の支払を求めることができますが、自ら一方的に別居している場合には、信義に反するとして、婚姻費用の請求が制限される場合があります。

ただし、相手方の暴力やモラハラ等があった場合や子どもへの虐待がある場合には、そのような状況下での同居を法は要求していないため、相手に無断で別居したからといって同居義務違反に問われることはありません。

むしろ子どもへの虐待等がある状況下で同意を得るのは非現実的ですので、速やかに安全なシェルター等へ避難する必要があります。

 

おわりに

今回のコラムでは、夫婦の同居義務について解説するとともに、同居義務違反があるとどうなるのかについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。夫婦には法律上同居義務があるので、相手方の同意なく一方的に別居することには注意が必要となります。同居義務違反した場合のリスクを考慮して、適切に対応することが重要となります。

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