第52回離婚弁護士コラム 別居中の不倫も慰謝料請求されるのか?

前回のコラムでは、夫婦には同居するべき義務があり、一方的に別居すると同居義務違反として離婚事由となったり慰謝料を請求される可能性があることを解説しました。では、お互い同意の上、別居し、その別居中に不倫した場合には慰謝料請求の対象となるのでしょうか。今回のコラムでは、別居中の不倫も慰謝料請求されるのかどうかについて解説したいと思います。

 

不倫と慰謝料の基本

「不倫」とは、一般的には既婚者が配偶者以外の者と交際している状態を指しますが、どこからが「不倫」なのかは、人によって解釈が異なる場合があります。

2人きりで食事に出かけたり、キスやハグをする行為を不倫と考える人も少なくないかと思いますが、法律的に慰謝料請求の対象となる行為、すなわち不貞行為か否かは、性的関係があったかどうかで判断されます。

ですので、単に2人きりで食事に出かけたり、キスやハグをしただけでは、慰謝料は発生しないことになります。性的な関係にあってはじめて慰謝料の請求が可能となります。

なお、異性と2人きりで旅行に出かけたり、ラブホテルに行った場合には、その旅行等が不貞行為となるわけではなく、通常、そのような状況下にあれば性的な関係にあったと推認されるため、慰謝料請求が通常認められることになります。

ポイント
■「不倫」の解釈は人によって異なる場合がある
■法的に慰謝料請求の対象になるかどうかは、不貞行為=性的な関係があったどうかで決まる

別居中の不貞行為と慰謝料

結論から言いますと、たとえ別居中であったとしても、正式に離婚していない以上は夫婦であることには変わりないので、不貞行為があった場合には慰謝料請求の対象となるのが原則となります。

ただし、別居の段階で、既に婚姻関係が破綻している場合には、法的に保護すべき平穏な婚姻生活というものがありませんので、例外的に、異性と性的な関係にあったとしても、慰謝料請求が認められないことがあります。

そもそも不貞行為が禁止される理由は、その不貞行為によって平穏であるべき夫婦の婚姻生活が破壊されてしまうからです。ですので、不貞行為以前に、既に婚姻関係が破綻しているような場合には、不貞行為によって平穏な婚姻生活が破壊されたとは言えなくなってしまうので、慰謝料を請求することができなくなってしまうのです。

例えば、夫婦間でケンカし、一時的に別居しているだけというようなケースで不貞行為を行うと、慰謝料を請求される可能性が高くなります。それに対して、夫婦間で話し合いを行い、お互い離婚することを前提に別居をはじめたというような場合や、別居して何年も経過し、お互いに連絡すらしていないというような場合には、慰謝料を請求できない可能性が高くなります。

ポイント
■別居中でも不貞行為を行うと慰謝料請求の対象となるのが原則
■婚姻関係が既に破綻している場合には慰謝料請求の対象とならない場合がある

 

おわりに

今回のコラムでは、別居中の不倫も慰謝料請求されるのかどうかについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。

別居に至った理由は夫婦ごとに異なるでしょうし、夫婦間でも互いの認識が必ずしも一致しているとは限りませんので、正式に離婚するまでの間の不貞行為は控えるのが無難です。婚姻関係は破綻していると一方が判断していたとしても、相手の方は関係をやり直すために一時的に距離をとっていただけと解釈しているケース等もあるからです。ただ、相手の暴力や子どもへの虐待等があったため、別居に至ったという場合には、いくら相手が婚姻生活は破綻していないと主張しても、既に別居の時点では婚姻関係は破綻していると判断されるでしょう。

不貞行為の判断や、婚姻関係が破綻しているかどうかの判断等は、究極的にはケースバイケースでの判断となりますので、判断に迷うケースでは、離婚問題に強い弁護士に相談することおすすめします。

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