第58回離婚弁護士コラム 【離婚を考えるあなたへ】夫のモラハラから自分を守るための具体的対策

「夫のモラハラがつらい」「離婚したいけれど不安で動けない」– かつては見過ごされがちだった精神的な暴力、いわゆるモラルハラスメント(モラハラ)が、SNSや報道を通じて注目され、離婚の大きな理由の一つとして認知されるようになりました。

今回の記事では、モラハラ夫との離婚に悩む女性のために、以下の内容をわかりやすく解説します。

■モラハラと離婚が注目される背景
■離婚前に知っておくべきこと
■ 離婚を切り出すときの注意点

この記事が、あなたが安心して新しい一歩を踏み出すための力になることを願っています。

なぜモラハラと離婚がこれほどまでに注目されているのか?

モラハラという言葉自体、この数年で急激に広まっている言葉です。それにより、これまでは存在はしていても認知がされていなかった離婚とモラハラとの関係が社会的にも注目されるようになりました。その背景をまとめます。

1. 精神的暴力が「離婚理由」として認められる時代に

これまでの日本では、家庭内の「暴力」は殴る・蹴るといった身体的なものが中心とされてきました。しかし今は、言葉や態度によって相手の心を追い詰める「精神的DV(=モラハラ)」も、重大な離婚理由として認められつつあります。

厚生労働省の調査によれば、配偶者からの精神的暴力に関する相談件数は年々増加中。モラハラは「離婚して当然の理由」として、裁判所でも真剣に扱われる問題になっています。

2. SNSで体験が可視化され、共感が広がった

これまでは「自分の家庭のことだから」と声を上げにくかったモラハラ被害。しかし近年は、X(旧Twitter)やInstagram、YouTubeなどで、被害を受けた女性たちが体験談を公開する動きが増えています。

こうした発信に共感の声が集まり、「自分だけじゃなかった」と気づく女性が増加中。モラハラと離婚は、もはや誰にとっても他人事ではないテーマとなっているのです。

3.離婚が「前向きな選択肢」として認められる社会へ

かつては「離婚=失敗」「子どもがいるのに離婚なんて」という社会的な偏見が強く存在していました。ですが今は、「我慢しない生き方」や「心の健康を守る離婚」が支持される時代に変わってきています。

■精神的な安全を最優先にする
■子どもに悪影響を与えない環境を選ぶ
■法制度や公的支援を活用する

こうした観点から離婚を選ぶ女性が増えており、選択肢として以前よりも受け入れられやすくなっています。

4. 法的制度の整備も後押しに

法律の面でも、モラハラを理由とした離婚が進めやすくなってきました。

■DV防止法では「精神的暴力」も対象に含まれる
■保護命令や一時避難制度の活用も可能

つまり、モラハラに苦しむ配偶者が「法的に離婚を進めやすくなる」環境が少しずつ整備されているのです。

モラハラ夫と離婚する前に知っておくべきこと

モラハラ夫と離婚を検討している方に、知って準備しておけると有効なことをまとめました。ぜひ参考にしてください。

離婚を有利に進めるには「証拠」が重要

モラハラは目に見える傷がないため、離婚理由として主張するには証拠が必要です。

〇有効な証拠例:
・モラハラ発言の録音・録画
・LINEやメールなどの保存
・日時・内容を記録した日記
・心療内科などの診断書

これらを計画的に集めておくことで、調停・裁判での主張が認められやすくなります。

離婚前に経済的な準備を整える

経済的な不安から離婚を躊躇する人は少なくありません。特に専業主婦やパート勤務の場合、離婚後の生活が見通せないことは大きな不安要素です。

〇離婚前にしておきたい準備:
・自分名義の銀行口座の開設
・収入源の確保(仕事の見通し)
・住まいの準備
・各種支援制度の確認(児童扶養手当、生活保護など)

通帳や保険証券、年金情報などのコピーも忘れずに保管しましょう。

子どもがいる場合は「親権」と「養育費」の確認を

子どもがいる離婚では、親権と養育費の取り決めが欠かせません。

■親権は基本的に一方の親にしか認められない(※2025年6月現在)
■モラハラ加害者側が親権を主張するケースもある
■養育費は「公正証書」や調停で確保するのが確実

家庭裁判所での手続きに備えて、育児実績や子どもの環境の整備状況などを整理しておきましょう。

離婚後の「相談先」や「味方」を見つけておく

一人で抱え込まず、誰かに相談することで気持ちが軽くなることもあります。以下の窓口を頼るのもおススメします。

■配偶者暴力相談支援センター
■法テラス(無料法律相談)
■女性センターや民間のシェルター
■モラハラ・DV専門の弁護士やカウンセラー

「声を出すこと」自体が、離婚への一歩です。

 

モラハラ夫への離婚の切り出し方と注意点

モラハラ夫との離婚は、ただでさえ精神的に負担が大きいものですが、相手が感情的になったり逆上したりする可能性も。切り出し方には気を付けましょう。うまく対応しないと、言葉の暴力や脅し、長引くトラブルに発展することもあります。

モラハラ夫に離婚を切り出すには慎重な準備が必要

以下、モラハラ夫に離婚を切り出すタイミングや話し方のポイント、注意点をまとめます。

1. 感情的にぶつからないことが鉄則

モラハラ夫は、自分の立場が脅かされると怒りや脅し、逆ギレでコントロールしようとする傾向があります。こちらが感情的になると、余計に攻撃的な反応を引き出してしまうため、冷静な態度を保つことが第一です。

たとえば、

■「もう限界」や「あなたのせいで苦しかった」などの感情表現は控える
■事実ベースで、「これからの人生を別々に歩みたいと思っている」と伝える
■短く・明確に意思を伝えることを意識する

など、相手を挑発しない言い回しを選ぶことが大切です。

2. 第三者を交えた話し合いが効果的

モラハラ加害者との1対1の話し合いは、相手のペースに巻き込まれてしまう危険性が高いです。言いくるめられたり、暴言を浴びせられたり、最悪の場合は脅迫的な言動に発展するケースもあります。

可能であれば、

■家族、信頼できる友人、弁護士などを立ち会わせる
■調停や弁護士を通じて意思を伝える
■会話は録音する、もしくは記録を残す

など、直接対面せずに伝える工夫や安全対策を講じましょう。

3. 事前に「出口戦略」を考えておく

離婚を切り出したあとは、相手が何を言ってきても慌てず、毅然とした態度を保つ必要があります。そのためには、あらかじめ準備を整えておくことが欠かせません。

具体的には:
■別居先や転居時期の目処をつけておく
■経済的な見通しを立てる(口座や仕事の確保)
■子どもの学校・住環境の変化への対応を整理
■離婚届の手続きや法的支援の流れを把握しておく

「切り出した後どうなるか」のシミュレーションをしておくことで、相手の反応にも動揺しにくくなります。

4. 反論や引き止めには冷静に対応

モラハラ夫は、離婚を切り出されると次のような反応を見せることがあります。

■「お前なんか一人で生きていけるわけない」
■「子どもは絶対に渡さない」
■「俺は悪くない、むしろ被害者だ」
■「今さら離婚なんてわがままだ」

こうした反論に感情的に反応せず、「話はもう決まっている」という意思を淡々と示すことがポイントです。

また、話がこじれる前に法的な手段に切り替える準備(調停申立・弁護士相談)をしておくことで、安全に話を進めることができます。

5. 自分を守ることが最優先

モラハラ夫との離婚において、最も重要なのは「自分の心と生活を守ること」です。相手を説得しようと頑張りすぎると、逆に傷ついてしまい、離婚が長引く原因にもなります。

「どうしたらうまく伝わるか」ではなく、「どうすれば安全に離婚できるか」を基準に動くことが、最も確実で安心な方法です。

離婚は逃げではなく、あなたと家族を守る行動

モラハラからの離婚は、「逃げ」ではありません。それは、自分と子どもの未来を守るための大切な選択です。

確かに離婚は簡単な決断ではありません。怖さや不安もあるでしょう。けれど、我慢し続けて自分を傷つけるよりも、一歩踏み出すことで得られる平穏と自由があります。

おわりに―あなたは、安心して生きる価値がある

「本当に離婚していいの?」「自分が悪いのでは?」–そんな思いに苦しんでいるなら、まずは自分の心の声を大事にしてください。あなたが感じている違和感には、きちんと意味があります。

離婚は、新しい人生のスタートラインです。
あなたには、幸せになる権利があります。

誰かと比べることなく、自分のペースで、未来へ向かって進んでいきましょう。

当事務所では、離婚に関する無料相談を実施しております。多くの離婚案件に携わってきた専門の弁護士が、皆様の離婚後の新しい生活を応援するべく親身になって離婚に際しての条件面や内容面をアドバイスさせて頂きます。親権、子の引き渡し、離婚問題でお悩み・不安のある方は、お気軽に当事務所までご相談ください。