第67回離婚弁護士コラム 価値観の違いで離婚できる?離婚の種類の基礎から弁護士が解説

夫婦生活を送る中で、「価値観の違い」を理由に離婚を考える方は少なくありません。お金の使い方、家事の分担、子育てへの考え方、休日の過ごし方。こうしたささいな違いが積み重なり、日常のストレスとなることは珍しくありません。

他方で、法律上は価値観の違いだけで離婚できるのかは少し複雑です。離婚には大きく分けて協議離婚・調停離婚・裁判離婚の3種類があります。離婚種類によって、価値観の違いを理由に離婚できたり、できなかったりする場合があります。

今回のコラムでは、離婚の種類について、その概要を解説するとともに、価値観の違いで離婚できるのか解説したいと思います。

 

協議離婚・調停離婚は夫婦間の合意があれば離婚可能

協議離婚と価値観の不一致

協議離婚とは、夫婦双方が話し合って合意すれば成立する離婚です。協議離婚は、夫婦双方の合意が成立し、離婚届を提出しさえすれば成立します。また、言い換えると、協議離婚の際には、離婚原因を特定する必要はありませんので、どのような理由であっても、合意さえあれば原則として離婚が成立します。そのため、価値観の違いだけでも協議離婚は可能です。

例えば、毎日の食事の好みや家事の分担、休日の過ごし方に対する考え方が違う、など、どのような理由であっても、夫婦双方が「もう一緒に暮らすのは難しい」と離婚に合意すれば、協議離婚は問題なく成立します。

協議離婚は手続きが比較的簡単で夫婦合意の下、離婚届を市町村役場に提出するだけで成立します。ただし、協議離婚であっても、離婚であることには変わらないので、財産分与や養育費、親権の取り決め等を、後の争いを防止するために、しっかりと行うことが大切です。特に子どもがいる場合は、子どもの生活や教育に配慮しながら合意内容を決めることができます。

 

調停離婚と価値観の不一致

調停離婚は、家庭裁判所で話し合いを行い、合意が得られれば離婚できる手続きです。協議離婚との違いは、裁判所が間に入ることで、感情的になりやすい話し合いを整理してくれる点にあります。簡単にまとめると、調停委員という仲裁役を交えての合意形成手続きというイメージです。

調停は裁判所で行うため、厳格な手続きをイメージする方も少なくありませんが、調停では、裁判所・調停委員はあくまで調整役にすぎないため、最終的に、合意するか否かは夫婦当事者であり、決定するのも夫婦になります。つまり、調停という場で、仲裁役を交え、冷静に話し合った結果、離婚に合意するならば、価値観の不一致という理由であっても離婚は成立します。

ポイント
・協議離婚も調停離婚も、夫婦の合意があれば価値観の違いだけでも離婚は成立します。
・いずれの場合にも財産分与・養育費・親権の取り決めも大切となる。

裁判離婚は法定離婚事由が必要

裁判離婚と価値観の不一致

「裁判離婚」は、家庭裁判所に訴訟を提起し、裁判上の手続で離婚を成立させる離婚方法です。離婚調停が不成立になった場合や審判に異議が出た場合には、裁判離婚を検討することになります。裁判離婚は、協議離婚や調停離婚とは大きく異なり、双方の合意がなくても強制的に離婚できるのが特徴です。合意がなくても一方的に離婚ができるという強力な手続きになるため、どんな理由であっても離婚できるというわけにはいきません。

裁判離婚では、法律で定められた「法定離婚事由」のいずれかに該当しなければ離婚は認められません。民法第770条では、法定離婚事由として以下の5つが規定されています。

1. 配偶者の不貞(浮気・不倫)
2. 配偶者からの悪意の遺棄(生活費を渡さない、家を出て帰らないなど)
3. 配偶者が強度の精神病などで婚姻を継続しがたい場合
4. 配偶者の重大な暴力や虐待
5. その他婚姻を継続し難い重大な事由

「価値観の不一致」は1〜4には当てはまらないため、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかが問題になります。

「婚姻を継続し難い重大な事由」

「婚姻を継続し難い重大な事由」の具体的な内容は、条文の規定からは必ずしも明確ではありませんが、蓄積された裁判例からは、単なる価値観に違いや性格の不一致だけでは、「婚姻を継続し難い重大な事由」には当たらないというのが原則になります。夫婦はそれぞれ人格のある個人である以上、価値観や性格が完璧に一致するということは想定しづらく、また、夫婦である以上、互いに相手を理解し協力すべきという価値観が根底にあると思われます。

ただし、単なる価値観の不一致に留まらず、その不一致から共同して日常生活を送るのが著しく困難となった場合には、例外的に「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、離婚が認められるケースもあります。

例えば、休日の過ごし方や趣味の違い、食事の好みの違いなど、一般的な生活上の相違は「婚姻を継続し難い重大な事由」ありとは認めませんが、以下のようなケースでは、離婚が認められる場合があります。

・夫婦間での意思疎通が完全に断絶し、家庭内での協力が一切不可能になった。
・一方が他方の意向を完全に無視し、生活や子育ての方針に対して重大な干渉・支配を行っている。
・長期間にわたり、精神的虐待や経済的制約が続き、生活の安全や心身の健康が脅かされている。

このような極端な状況が認められれば、価値観の違いを理由とした裁判離婚が成立する場合もありますが、単なる意見の相違や生活習慣の差だけでは難しいことが多いということです。

ポイント
・裁判離婚が成立するためには法定離婚事由が必要
・単なる価値観の不一致だけでは法定離婚事由になりにくい
・極端な不一致や精神的苦痛など、客観的に破綻が認められる場合には「婚姻を継続し難い重大な事由」ありと認められるケースも

 

おわりに

今回のコラムでは、離婚の種類について、その概要を解説するとともに、価値観の違いで離婚できるのか解説しましたが、いかがだったでしょうか。

価値観の違いを理由に離婚を考える場合、協議離婚や調停離婚であれば、夫婦双方の合意の上、離婚することができます。夫婦間で合意が形成できれば手続きは比較的スムーズですが、財産分与や養育費、親権などについても、しっかりと取り決めることが重要です。

裁判離婚は、夫婦の合意が形成できなくても離婚することはできますが、法律で定められた離婚原因(法定離婚事由)が必要となります。単なる価値観の違いだけでは法定離婚事由に該当すると認められることは少なく、生活や精神に深刻な支障がある場合に限られます。

離婚を検討する際には、まず自分に合った方法を見極め、必要に応じて弁護士など専門家に相談することが安心です。特に裁判離婚をも見据えた場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」の有無を客観的に主張・立証する必要があるため、離婚問題に強い弁護士に相談することが重要です。

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