第72回離婚弁護士コラム 財産分与はどう変わる?2026年4月施行の改正法のポイントを弁護士が解説

2026年4月、離婚制度に関する民法の改正が施行されます。今回の改正では、共同親権や養育費制度の見直しが大きく注目されていますが、財産分与のルールにも重要な変更が加えられています。
離婚の際には、夫婦が婚姻期間中に築いた財産をどのように分けるのかが大きな問題になります。しかし実際には、離婚時の混乱の中で財産の整理が十分にできなかったり、相手の財産の全体像が分からなかったりすることも少なくありません。
今回の民法改正は、こうした実務上の問題を踏まえ、財産分与のルールをより明確にし、当事者が適切に権利を実現できるようにすることを目的としています。
本コラムでは、2026年4月施行の改正法によって財産分与のルールがどのように変わるのかを、順番に分かりやすく解説します。
2026年民法改正で財産分与はどう変わる?
今回の改正の背景には、離婚後の財産問題をめぐる実務上の課題があります。
従来の制度では、財産分与の請求期限が比較的短いことや、相手の財産を十分に把握できないことなどが原因となり、当事者が十分な分与を受けられないケースも見られました。
また、家庭裁判所の実務では一定の判断基準が積み重なっているものの、それが法律の条文としては明確に書かれていない部分も多く、一般の方にとっては分かりにくい面がありました。
今回の改正は、こうした状況を踏まえ、実務で確立しているルールを法律上明確にするとともに、当事者の権利を実現しやすくすることを目的としています。
改正のポイントを整理すると、主に次の4点です。
⚫︎財産分与の請求期限が離婚後2年から5年へ延長
⚫︎財産分与の際に考慮すべき事情が法律上明確化
⚫︎いわゆる「2分の1ルール」が法律に明記
⚫︎相手の財産を把握するための情報開示命令の新設
以下では、それぞれの内容を具体的に見ていきます。
財産分与の請求期限が「2年」から「5年」に延長
まず大きな変更点として、財産分与を請求できる期間が延長されます。
これまでの民法では、財産分与の請求は「離婚のときから2年以内」に行う必要がありました。つまり、離婚から2年が経過すると、家庭裁判所に財産分与を求めることができなくなってしまいます。
しかし実際には、離婚の直後は生活環境の変化への対応や子どもの問題などで忙しく、財産関係の整理まで手が回らないことも少なくありません。また、離婚後に相手の財産が新たに判明するケースもあります。
このような事情から、「2年という期間は短すぎるのではないか」という指摘が以前からありました。
そこで今回の改正では、財産分与の請求期限が離婚後5年以内へと延長されます。これにより、離婚後に落ち着いてから財産の調査や交渉を行う余裕が生まれることになります。
もっとも、期間が延びたとはいえ、時間が経つほど証拠の収集が難しくなることもあります。財産分与を検討している場合には、できるだけ早い段階で状況を整理しておくことが重要です。
財産分与で考慮すべき事情が法律に明記
今回の改正では、財産分与を決める際にどのような事情を考慮するのかという点についても整理が行われました。
これまでの民法では、財産分与について比較的抽象的な規定しか置かれておらず、具体的な判断基準は主に家庭裁判所の実務や裁判例によって形成されてきました。そのため、一般の方にとっては「どのような基準で財産分与が決まるのか」が分かりにくい面もありました。
改正民法では、財産分与について、「当事者双方がその婚姻中に取得し、又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入その他一切の事情」を考慮して定めると規定し、考慮事項の明確化をしました(改正後民法768条3項)。
これにより、当事者にとっても「どのような要素が重視されるのか」が理解しやすくなり、財産分与の見通しを立てやすくなることが期待されています。
財産分与の「2分の1ルール」が法律上明確に
離婚に関する相談でよく聞かれるのが、「財産は半分ずつになるのですか」という質問です。
家庭裁判所の実務では、夫婦が婚姻期間中に築いた財産については、原則として2分の1ずつ分けるという考え方が広く採用されてきました。これがいわゆる「2分の1ルール」です。
たとえば、夫婦の一方が主に収入を得ていたとしても、もう一方が家事や育児を担っていた場合には、その貢献によって財産形成が支えられていたと考えられるため、基本的には半分ずつ分けるのが相当とされてきました。
もっとも、このルールはこれまで主に裁判例や実務によって形成されたものであり、法律の条文に明確に書かれているわけではありませんでした。
今回の改正では、この2分の1ルールの考え方が法律上も明確に位置付けられることになります。
もちろん、個別の事情によっては分与割合が変わることもありますが、原則的な考え方が法律上も示されることで、財産分与の予測可能性が高まることが期待されています。
相手の財産を調べる「情報開示命令」が新設
財産分与をめぐる実務上の大きな問題の一つが、相手の財産の把握が難しいことです。
離婚をめぐる紛争では、相手が自分の財産を十分に開示しない、あるいは意図的に隠してしまうというケースもあります。銀行口座や株式、投資資産などの存在が分からなければ、適切な財産分与を求めることは難しくなります。
こうした問題に対応するため、今回の改正では家庭裁判所が財産の開示を命じる制度(情報開示命令)が新たに導入されます。
この制度により、財産分与の手続の中で、相手に対して一定の財産情報の開示を求めることが可能になります。
もちろん、すべてのケースで直ちに利用できるわけではありませんが、少なくとも制度として「財産を隠したまま手続を進める」ことが難しくなる方向に制度が整備されたといえます。
民法改正後も財産分与でトラブルになるケース
今回の改正によって制度はより明確になりますが、それでも財産分与をめぐるトラブルが完全になくなるわけではありません。
実際の離婚事件では、次のような問題が生じることが少なくありません。
・不動産の評価額をめぐって争いになる
・将来の退職金をどう扱うかが問題になる
・自営業の場合、事業用財産の評価が難しい
このような問題は、個別の事情によって結論が大きく変わることがあります。そのため、制度の概要を理解することは重要ですが、具体的なケースでは専門的な判断が必要になることも少なくありません。
財産分与で悩んだ場合は早めの相談を
今回の民法改正によって、財産分与のルールはこれまでよりも分かりやすく整理されることになります。特に、請求期限の延長や情報開示制度の整備は、当事者が適切な財産分与を受けるうえで重要な意味を持つ改正といえるでしょう。
もっとも、実際の財産分与では、夫婦それぞれの収入や財産の内容、婚姻期間、生活状況など、さまざまな事情が関係します。また、相手の財産をどのように把握するのか、どのような方法で分与を求めるのかといった点も重要になります。
離婚や財産分与でお悩みの方は、一人で判断するのではなく、早い段階で専門家に相談することも検討してみてください。状況を整理することで、適切な解決の方向性が見えてくる場合もあります。
当事務所では、離婚問題、財産分与について、数多くの問題を解決してきた実績があります。財産分与でお悩み・お困りの方は、初回無料にて相談を受けておりますので、お気軽にご相談ください。