第30回離婚弁護士コラム 離婚前に別居する場合に知っておきたい婚姻費用について

離婚の際には、財産分与、慰謝料、養育費など、クリアすべきお金の問題がいくつか思い浮かぶ方も多いと思いますが、意外と見落とされがちなのが「婚姻費用」。今回のコラムでは、婚姻費用とその分担請求について解説したいと思います。

 

婚姻費用とは

婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を維持するために必要となる費用全般のことをいいます。

法律上、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」(民法第752条)と定められており、夫婦は互いに扶助する義務があり、婚姻生活に必要な費用(婚姻費用)を分担する義務があります。

婚姻継続中は、互いに生活を保持する義務があるため、例えば、一方が専業主婦で収入がないという場合には、他方は、その者に生活費を支払う義務が発生することになります。

離婚時に婚姻費用がよく問題になるのが、離婚前に、別居したり、DV等から避難するためにシェルターを利用するようなケースで、その別居期間中の生活費を請求するという場合です。

たとえ別居等をしていたとしても、婚姻関係が続いている以上、婚姻費用として生活費を負担しなければならず、その費用を受け取っていない場合には、分担を求めることができます。これを「婚姻費用分担請求」と呼びます。

 

婚姻費用に含まれるもの

婚姻費用には、家賃、光熱費、食費などの生活に欠かせない費用はもちろん、子どもの学費や病気などのため必要となる通院費・治療費も含まれます。また、常識的な範囲の交際費や娯楽費も婚姻費用に含まれます。

 

婚姻費用の金額

婚姻費用のうち、どちらがどのくらいの割合で負担するのかについては、負担する夫婦の負担能力、収入の大小に応じて変わってきます。

実際、婚姻費用の具体的な金額がいくらになるのかについては、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」に基づいて計算されるのが一般的です。

参考:裁判所「養育費・婚姻費用算定表」
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

 

婚姻費用は早い段階で請求する

婚姻費用分担請求は、「請求したとき」から認められると裁判所は一般的に考えています。つまり、過去にもらえるはずだった婚姻費用を、後から婚姻費用分担請求として請求しても、裁判所が必ず認めてくれるとは限りません。ですので、別居後に婚姻費用を受け取っていない場合には、なるべく早い段階で婚姻費用分担請求をすることが重要となります。

また、万が一、調停や審判となった場合に備えて、「請求した時点がいつなのか」がわかる証拠を残すために、単に口頭で請求するのではなく、内容証明郵便等を送付することをおすすめします。

 

別居後の婚姻費用について弁護士に相談

婚姻費用の分担請求は、単に離婚時にお金を多くもらうというよりも、別居中の生活の支えにもなるため、「離婚を見据えて、まずは別居したいけど、生活費が問題で」と離婚を躊躇されている方の後押しにもなります。

当事務所では、離婚時の問題だけではなく、離婚に向けての準備や、離婚後の生活を見据えた支援を大切にし、皆様の悩みに真摯に対応いたします。初回無料にて、相談を受けておりますので、離婚問題でお悩みの方は、お気軽にご相談下さい。