第33回離婚弁護士コラム 離婚協議中の「子どもの連れ去り」について

日本の法律では、未成年の子どもがいる場合には、離婚の際に、父親と母親のどちらが親権者になるのか決める必要があります。両親ともに親権を望む場合には、争いに発展し、場合によっては「子どもの連れ去り」が行われるケースも少なくありません。今回のコラムでは、離婚の際の「子どもの連れ去り」について解説したいと思います。

 

「子どもの連れ去り」・「連れ去り別居」

日本の法律では、夫婦の婚姻中は、夫婦が共同して親権を行使する共同親権となっていますが、離婚の際には共同親権は認められず、父親または母親のどちらか一方を親権者と決める必要があります。

離婚協議中に、親権の奪い合いになり、強制的に子どもを連れて行ってしまう、「子どもの連れ去り」や、いわゆる「連れ去り別居」が強行されることも少なくありません。

 

子どもの親権と「現状尊重の原則」

子どもの親権を考える際に、「母親優先の原則」や「兄弟姉妹不分離の原則」など、「子どもの利益を最優先」に守るためのいくつかの考え方・原則がありますが、「子どもの連れ去り」と深く関わるのが「現状尊重の原則」と呼ばれるものです。

現状尊重の原則(監護の継続性)とは

現状尊重の原則とは、「監護の継続性」とも説明されますが、子どもの心身の安定のためには、今まで育ってきた状況・状態を尊重するのが望ましいという考え方です。急激な生活環境の変化は、子どもにとって大きな精神的な負担を伴うため、現状、健やかに穏やかに暮らせているならば、その状況を尊重しようという発想です。

その意味では、「子どもの連れ去り」は、子どもの生活環境を一方的に変更する行為といえ、親権を争う際には、不利になる行動と言えます。

一時期、「現状尊重の原則(監護の継続性)」の発想を逆手に取って、子どもを連れ去り、監護している環境を既成事実として作ってしまうという手法もあったようですが、現在では、一方的な「子どもの連れ去り」は親権者としての適格性を疑われる行為と認識されるのが一般的です。

もっとも、これらの原則は、あくまで「子ども利益を最優先」に考えた際の原則のため、例えば、「暴力を振るう夫から逃れるために、やむなく子どもを連れて出て行った」などのような場合には、むしろ子を守るために親権者として必要な行為といえ、親権争いで不利に働くことはありません。

 

問題となる「子の連れ去り」

その「連れ去り行為」が問題となるかどうかは、ケースバイケースで判断せざるを得ないことにはなりますが、以下のような場合には問題になりやすいと言えます。

■親権についてまさに争っている最中に連れ去る
■保育園・幼稚園などの外で待ち伏せして連れ去る
■嫌がる子どもを無理やり連れ去る
■いままで監護していなかった親が連れ去るなど

 

子の連れ去りへの対処

「連れ去り」が行われた子を、更に「連れ去る」というようなことをすると、それ自体が違法な連れ去りとも判断されるおそれがあります。また、親権者について争ってる際には、不利益に働く危険性もあります。

そのような場合には、家庭裁判所に子の引き渡し、監護者指定の審判を申立て、審判前の保全処分として、子の引渡しを求めることになります。

家庭裁判所への審判や保全処分の申し立てを個人で行うのはハードルが高いため、「子の連れ去り」が行われた場合には、親権、連れ去り問題に強い弁護士に、すぐに相談することをおすすめします。

 

参考:当事務所の解決事例
【解決事例】子供が連れ去られてしまったが、引き渡しが成功した事例

当事務所は離婚問題について数多くの事件を解決してきた実績があります。子の連れ去りや離婚問題でお悩みのある方は、無料相談を実施しておりますので、お気軽にご相談ください。