第12回離婚弁護士コラム 財産分与の対象にならない特有財産とは

前回のコラムでは、離婚の際に問題となる財産分与について基本から解説しました。今回のコラムでは、財産分与の対象にならない特有財産について詳しく解説したいと思います。

 

財産分与とは(前回のコラムのおさらい)

財産分与とは、夫婦が離婚するに際して、婚姻中に築き上げた財産を分け与えるよう請求することができる制度です。 婚姻中に築き上げた財産は、夫婦の協力により形成・維持されてきたと考えられるので、そのような共有財産は離婚後には、財産の形成・維持の貢献度に応じて分配しようという制度です。この財産分与という制度があるため、婚姻期間中に得た財産は、夫婦間で分けるのが原則になります。

 

特有財産とは

特有財産とは、夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産のことをいいます。この特有財産は、夫婦の協力とは無関係に築き上げられた夫婦の一方の固有財産であるため、財産分与の対象にはなりません。

例えば、独身時代から貯めていた預金などは婚姻前から有する財産のため特有財産にあたります。婚姻中に親の遺産を相続して得た財産も婚姻関係とは無関係に自己の名で得た財産となるので、特有財産にあたり、財産分与の対象にはなりません。

しかし、例えば、形式的には自己の名義となっている不動産であっても、婚姻後に夫婦で購入していた場合には、共有財産として扱われ、財産分与の対象になります。

 

特有財産かどうかで争う理由

法律上、特有財産については「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。」(民法762条1項)と規定するのみで、何が具体的に特有財産であるのかについては、明確に規定されているわけではないので、その判断は個別に見ていくしかありません。

財産分与を求める側としては、ある財産を、特有財産ではなく共有財産として扱った方が、財産分与としてもらえる額が大きくなるため、なるべく特有財産を認めたくないという要請があります。

逆に、財産分与を求められた側としては、自己の特有財産を多く認めれられた方が、財産分与として支払う額が少なく済むため、なるべく特有財産を多くしたいという要請があります。

そのため、離婚に際しては、特有財産なのか共有財産なのかで争うケースが多くなります。

 

特有財産だと主張するものが立証責任を負う

婚姻関係中に得た財産は、基本的には、夫婦の共有財産であると法律上推定されるので、「この財産は共有ではなく、自分の特有財産だ」と主張する者が、それを立証する必要があります。

特有財産であるか否かが問題となった場合には、婚姻時の通帳や取引履歴明細などの資料を収集して、夫婦の協力で形成された財産ではないことを立証する必要がでてきます。

 

特有財産か共有財産か不明な場合は弁護士に相談

特有財産か共有財産か否かについての判断は、過去の判例等を基準に、専門的知識が必要になります。特に、自分が財産分与を求められた場合には、特有財産であることを証明する必要もあるため、どういった資料を用意すべきか等について、弁護士に相談することをオススメします。万が一、調停や審判に移行した際の証拠になりますし、交渉の段階においても、きちんとした資料に基づいた主張となると有利に話を進めることが可能になります。