親権者を決定する際に考慮される事情について
親権を決めるにあたり、どういった事情が考慮されるのかご説明いたします。
①母親(母性)優先
日本では、父親が働き、母親が専業主婦として子育てをする役割であることが多く、このような場合には、母親が親権者として有利になります。
なぜなら、離婚に至るまでに主に子供を監護してきた方を親権者にする方が、子どもの福祉の観点から見て、適切な場合が多いからです。
主たる監護者がどちらであるかについては、これまで子どもの食事を作ったり、食べさせたり、学校の送り迎えをしたり、入浴をしたり、寝かしつけていたのは誰か等を総合的に考慮し判断します。そのため、大抵は母親が有利になる場合が多いと言えます。
しかし、最近では父母が同じくらい働く場合や、母親が主として働く家庭も増えており、父親が主たる監護者になることもまま見受けられます。
② 現状維持の尊重
子どもの現在の生活環境に特段問題がない場合には、現状を尊重し、急激に生活環境を変化させないようにします。今まで監護してきた者を変更したり、転校を伴うことになるのは、子どもが心理的に不安定な状況に陥る危険があるためです。
③ 子どもの意思の尊重
子どもが15歳以上の場合、裁判所は、親権者の決定をするにあたり、子ども本人の意向を聞き、その旨を尊重しなければなりません。
また、子どもが15歳未満の場合であったとしても、概ね10歳頃からは子どもの意向を重視する傾向にあります。
逆に子どもが幼い場合、あまり子どもの意思は考慮されません。これは、仮に子どもがどちらか選べたとしても、幼い子どもは一般的に身近にいる大人の影響を受けやすく、うまく自分の感情を言葉に表せないことがあります。そこで、幼い子どもの親権については、家庭裁判所から選任された調査官が子どもや学校、当事者などと面談し、子どもの発育段階に応じた評価を行います。
④ 兄弟姉妹関係の尊重
兄弟姉妹は出来るだけ分離すべきではないと考えられています。一般的に幼い兄弟姉妹は、共に生活した方が生活環境が安定する場合が多く、また人格形成に重要な影響を与えるためと考えられます。もっとも、絶対的なものではなく、兄弟姉妹の同居期間が短く結びつきの弱い場合は、子どもの意向やその他の事情を考慮して、兄弟姉妹を分離することもあります。
⑤ 有責性
離婚原因たる有責性と親権者の指定の判断は、全く異なる考え方になります。例えば、妻の不貞行為により離婚しなければならない場合であっても、親権者としてふさわしくないかどうかとは関係ありません。しかし、不貞行為伴い、育児を放棄するなど子どもの監護を害するような場合には、親権者として適切でない旨の主張が認められます。
親権者がどちらが相当かはその夫婦の個別事情によって様々ですので、札幌市、江別市、小樽市、北広島市などにお住まいで、親権問題でお悩みの方は、やなだ総合法律事務所までご相談下さい。