第11回離婚弁護士コラム 基本から学ぶ離婚とは切り離すことのできない財産分与について
離婚に際して、親権や養育費など気になる問題は多々あると思いますが、やはり多くの方が気にかけるのは財産分与ではないでしょうか。婚姻期間が長くなればなるほど、夫婦共有財産は増えていき、一般的に財産分与の額も大きくなることから、その額によって離婚後の経済的事情も大きく変わるので、離婚を考えている方の大きな関心事になるのではないでしょうか。今回のコラムでは、離婚とは切っても切れない財産分与について基本的なことを解説したいと思います。
財産分与とは
財産分与とは、夫婦が離婚するに際して、婚姻中に築き上げた財産を分け与えるよう請求することができる制度です。
財産分与の種類は大きく次の3つになります。
清算的財産分与
財産分与という制度の最も基本的な考えで、夫婦で築き上げた財産は、その貢献度に応じて公平に分配すべきというものです。婚姻期間中の夫婦の財産は、夫婦互いの協力によって形成・維持されてきたはずなので、名義が誰であるかは関係がなく、その貢献度によって分配されます。
この清算的財産分与は、不倫などによって離婚に至る原因をつくった者(有責配偶者)からの請求も認められます。
よくある誤解なのですが、「離婚原因を作ったのは相手なのに、なぜそんな相手からの財産分与が認められるの!?」という方がいらっしゃいますが、清算的財産分与は、財産の形成・維持のための貢献度に応じて公平の観点から分配するものだからです。二人のものを二人でわけるというだけなのです。
ただ、もちろん有責配偶者に対しては、財産分与とは別に、慰謝料を請求することは可能です。
扶養的財産分与
扶養的財産分与とは、離婚をした場合に夫婦の片方が生活に困窮してしまうという事情がある場合に、その生計を補助するという扶養的な目的により財産が分与されることをいいます。
一方が専業主婦(主夫)であったり、高齢や病気などの事情により働けない場合に、経済的に立場が弱い者が生活に困窮してしまわないように配慮しようというものです。
慰謝料的財産分与
清算的財産分与でお話したとおり、財産分与と慰謝料請求は全く別の性質を有するため、別々に請求するのが基本になります。公平の観点から二人で財産を分けることと、有責配偶者に、その責任に応じて慰謝料を請求することは別のものだらかです。
しかし、いずれの請求であっても、結局は金銭の支払いが問題になることから、両者をまとめて「財産分与」という形式で請求することもあり、その場合の「財産分与」は慰謝料の性質も含むことになります。そのような「財産分与」を慰謝料的財産分与といいます。
例えば、夫が浮気をし、それが原因で離婚に至った場合、妻は、財産分与を請求することが可能ですし、慰謝料の請求も可能です。
仮に夫婦で築き上げた財産が1000万円あり、貢献度が1:1であれば、財産分与として500万請求でき、さらに慰謝料の額が100万だとすると、合計で600万円請求できることになります。これらを別々請求せずに、「あなたが有責配偶者なのだから財産分与として600万円もらうね」と約束しても結果は変わらないということです。
財産分与の割合
財産分与の具体的割合については、法律上明確な決まりは定められていません。ですので、夫婦間で話し合いにより決めるのが原則になります。
話し合いでどうしても決まらない場合には、調停や審判、場合によっては裁判で決めることになります。そうなった場合には、多くのケースで半分ずつにすることになります。
特別な事情がない限りは、夫婦が共同して築き上げた財産である以上、貢献度も等しいだろうという考えに基づくからです。この考えは、仮に夫婦の一方が専業主婦(主夫)であっても同様です。
財産分与の対象となる財産
財産分与の対象となる財産は、夫婦が婚姻生活中に築いた財産に限られます。独身時代からの預金であったり、一方が相続で取得した財産は、夫婦の協力とは無関係に取得した財産なので、財産分与の対象にはなりません。
まとめ
今回のコラムでは、財産分与について、基本的なことを解説しましたが、いかがだったでしょうか。財産分与についてもっと詳しく知りたい方や気になることがある方は、当事務所までお気軽にご相談ください。多くの離婚問題に関わり、豊富な実績のある弁護士が皆様のお悩みに適切にご対応いたします。