不倫を職場にバラすことについて
不倫をされてしまった方からのよくある相談の一つとして、配偶者や不倫相手に対し、慰謝料請求だけではなく、不倫相手の職場などに、不倫をしたことを暴露したり、密告して、会社をやめさせたいと相談があります。
相手の職場に伝えることによって、不倫行為をした配偶者または不倫相手が職場を解雇されたり、やめさせたりするために仕返し目的のためです。
確かに、不倫をされてしまい、相手方を絶対に許せない、何とかして苦痛を与えたいとの感情は理解できます。
しかし、嫌がらせ目的で職場などに不倫行為を伝えることは、職場に伝えたこと自体が不法行為として、職場に伝えた人が損害賠償の責任を負ってしまう場合があります。
東京地裁平成24年12月21日の判決では、不倫された夫の代理人弁護士が、不貞相手の代理人弁護士から、夫が職場へ不貞行為を伝えないようにと、警告されていたにもかかわらず、不貞行為を不貞相手の職場に暴露し、そのことによって不倫相手が退職することになった事案に、以下のように判断して、不倫相手の夫に対する損賠償請求を認めました。
「(不貞行為を職場に暴露して、これをもって慰謝料の支払いを求め、退職に追い込むなど、)このような交渉の態様は、社会常識に裏打ちされた合理的な対話を進めるものとはいい難く、許容範囲を超えるものというべきである。…正当な理由なくこれを第三者に開示する行為は、プライバシーを侵害するもの又は弁護士法23条に違反するものとして、不法行為になるものと解するのが相当である。」
と示し、職場への暴露に対する損害賠償請求を認めました。
その損害の範囲には、慰謝料だけでなく、給与総額の6か月分の収入及び弁護士費用も含められ、結局損害額は193万円に上りました。
さらに、理論上、場合によっては、職場に不貞行為を伝えることをもって名誉棄損などの責任になる恐れもあります。
このように、不貞行為を配偶者または不貞相手の職場に伝えることは、伝えた側が損害賠償請求をされてしまうため、控えるべきでしょう。
不貞行為をされてしまった場合には、配偶者または不貞相手に対する慰謝料の請求という正当な法的手段によって対処し、間違っても嫌がらせのために職場に不貞行為を暴露することなどしないことが賢明といえるでしょう。
そのためには、弁護士の早期の段階でのご相談をおすすめします。