第26回離婚弁護士コラム 離婚届けを勝手に提出されたらどうなる?離婚届不受理申出の制度についても解説

「離婚の意思がないのに、勝手に離婚届を出されてしまった」、「離婚についての協議が整っていないのに、無断で相手が離婚届を出してしまった」などの相談を弁護士として受けることも少なくありません。実際に、無断で離婚届が出されてしまったらどうなるのか、また、そのような場合に備えて利用する離婚届不受理申出の制度について解説したいと思います。

 

離婚届を勝手に提出されたらどうなるのか

協議離婚が成立するためには、法律上、夫婦の離婚の意思と離婚届の提出が必要になります。
しかし、離婚届は、形式的に不備がなければ役場に提出することが可能なため、夫婦の一方が離婚に反対していても、他方が勝手に離婚届を作成し、提出してしまうと、形式的には離婚が成立し、戸籍上も離婚の扱いになってしまいます。

実際、夫婦であれば、一般的には同居しており、相手の印鑑等を勝手に使用して、虚偽の離婚届を作成することは可能で、そのような事案も少なくありません。

もちろん、勝手に離婚届を作成し、提出する行為は、電磁的公正証書原本不実記録罪(刑法157条1項)、有印私文書偽造罪(刑法159条1項)・偽造有印私文書行使罪(刑法161条1項)等の罪に問われる可能性がありますので絶対にしてはならない行為です。

一度、離婚届が提出されて受理された以上、形式的には離婚が成立している状態になりますので、これを覆すためには、離婚届の効力をなくすために、離婚無効裁判を家庭裁判所に申し立てる必要があります。

 

離婚届けを無断で提出されないための離婚届不受理申出

離婚する意思のない者や、離婚の条件を調整中の者にとっては、無断で離婚届を提出する行為は、その届出の効力を覆す手間がかかり、大変迷惑な行為であり、また、大きな負担となります。

そのような場合に備えて、離婚届不受理申出という制度があります。この離婚届不受理申出を、あらかじめ本籍地の役所に対し届けておくと、離婚届が勝手に提出されても受理されないようになります。

 

離婚届不受理申出の方法

離婚届不受理申出は、必要事項を記載した離婚届不受理申出書を本籍地又は住所地の市区町村役場に提出して行います。

離婚届不受理申出書は、自治体の役場の窓口や自治体のホームページからダウンロードすることができます。

提出先は、本籍地の市区町村役場に提出するのがスムーズですが、遠方に住んでいるなど提出が難しい場合は、住所地の役場でも構いません。

提出時には、本人確認が必要になりますので、運転免許証やパスポートなどの身分証を忘れずに持参しましょう。この本人確認の必要性から、原則として本人自身が役所に出頭して手続きすることが必要です。代理人や郵送による申出は、病気などやむを得ない理由がないと認められませんので注意が必要です。

離婚届不受理申出に有効期限はありませんので、一度提出されると、取り下げられるまでずっと有効となり、離婚届が受理されないことになります。(戸籍法改正前は6ヶ月の有効期限があった)

 

離婚届不受理申出をした後に離婚するには

離婚届不受理申出は、単に離婚をしたくないというケースよりも、実際には、離婚についての協議中に条件等が整う前に、勝手に離婚届を提出されることを防止する意図で利用されることが少なくありません。

仮に、条件等が整い、離婚届を正式に提出する場合には、離婚届不受理申出を取り下げる必要があります。

離婚届不受理申出を取り下げる際には、離婚届不受理申出をした場合と同様の方法により、離婚届不受理申出の取下書を、市町村役場に提出します。

 

勝手に離婚届を提出されたら弁護士相談を

離婚の意思がないのに、また、まだ離婚条件を協議中という段階で離婚届を提出されてしまったら、専門の弁護士へご相談ください。当事務所では、初回無料にて、離婚問題に精通した弁護士が相談を受けております。また、離婚協議中で相手が勝手に離婚届を提出するのを止めたいなどの相談も受けておりますので、お悩みごとがあれば、お気軽にご相談ください。