第47回離婚弁護士コラム 離婚の際に取り決めておくべき事項について
最も一般的な離婚の方法として、協議離婚という方法があります。日本における離婚の約90%はこの協議離婚と言われています。協議離婚は、その名が示すとおり、夫婦双方で離婚について話し合い(協議)を行い、協議が調ったら、離婚届を役所に提出するという離婚方法です。協議離婚は、夫婦双方に離婚する意思があり、離婚届を提出しさえすれば、離婚自体は有効に成立しますが、協議の際に取り決めをしっかりと行わないと、後にトラブルに巻き込まれる危険性があります。では、離婚の際に、具体的にどのような事項について取り決めを行うべきなのでしょうか。今回のコラムでは、離婚の際に取り決めておくべき事項について解説したいと思います。
財産分与について
財産分与とは、夫婦が離婚するに際して、婚姻中に築き上げた財産を分け与えるよう請求することができる制度です。
夫婦が婚姻中に築き上げた財産は、夫婦二人で築き上げたものである以上、離婚の際には、二人で公平に分けるべき財産です。そこで、法律上、財産分与という制度を設け、離婚の際には、夫婦の一方が他方に対して、財産を分けるよう請求できるようにしているのです。
財産分与では、基本的に、夫婦で築き上げた財産を1/2ずつ分けることになります。仮に、例えば、夫婦の一方が、専業主婦(夫)で、収入がなかったとしても、財産の半分を受け取る権利はありますので注意が必要です。
夫婦の一方が家事や育児等を行っていてくれたからこそ、他方が仕事に専念できたと考えられるため、夫婦の財産を築き上げることに貢献してきたと法律上、評価されるためです。
離婚の際には、この財産分与として、何をどのように、いくら分与するのか取り決めることが大切です。
財産分与について詳しくは
「第11回離婚弁護士コラム 基本から学ぶ離婚とは切り離すことのできない財産分与について」をご覧ください。
婚姻費用について
婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を維持するために必要となる費用全般のことをいいます。字面から、結婚にかかった費用と誤解される方も少なくありませんが、結婚生活に必要な費用全般、簡単に言うと、日々の生活費が婚姻費用となります。
法律上、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」(民法第752条)と定められており、夫婦は互いに扶助する義務があり、婚姻生活に必要な費用(婚姻費用)を分担する義務があります。
離婚前に、別居していたり、DV等から避難するためにシェルター等を利用していたようなケースで、その別居や避難期間中の生活費を負担してもらっていないという場合には、その費用の分担を請求することができます。
別居等はしていなくても、生活費を入れてもらっていないという場合には、それを婚姻費用として請求することももちろん可能です。
婚姻費用の分担がしっかりとなされていなかった場合には、離婚の際に、婚姻費用についてどうするのかについて、取り決めを行い、請求することが大切です。
婚姻費用について詳しくは
「第30回離婚弁護士コラム 離婚前に別居する場合に知っておきたい婚姻費用について」をご覧ください。
慰謝料について
離婚をする際に、必ず慰謝料を請求できるというわけではありませんが、例えば、「相手の浮気が原因で離婚するに至った」というように、相手側に離婚の原因がある場合には、その相手に(有責配偶者に)、慰謝料を請求することが可能です。
浮気などの不貞行為以外にも、DVやモラハラ、悪意の遺棄(正当な理由なく夫婦間の義務を履行しないこと )等があった場合も慰謝料を請求することが可能です。
慰謝料がどのような場合に請求できるのかについて詳しくは
「第31回離婚弁護士コラム 離婚の慰謝料ってどんな場合に請求できるのか」をご覧ください。
慰謝料を請求できるケースでは、その慰謝料をどうするのかについて、取り決める必要があります。
子どもがいる場合の取り決める事項
子どもがいる夫婦が離婚する場合には、「親権」、「養育費」、「面会交流」の3点について取り決める必要があります。
親権について
親権とは、未成年の子を養育監護し、その財産を管理し、その子を代表して法律行為をする権利・義務のことをいいます。未成年の子を養育監護し、日々の世話をし、子の財産を管理する権利があり、それは義務でもあるというのが親権になります。
婚姻中は、夫婦が共同して親権を行使しますが、離婚する際には、どちらが親権者となるのかを決める必要があります。婚姻届にも親権者の記載欄があり、その記載がない限り離婚届は受理されませんので注意が必要です。
親権について詳しくは
「第20回離婚弁護士コラム いまさら聞けない親権とは何か?親権の基本から弁護士が解説」をご覧ください。
養育費について
養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用のことをいいます。一般的には、子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する費用を意味し、衣食住に必要な経費、教育費、医療費などがこれに当たります。
子どもを監護している親は、他方の親から養育費を受け取ることができます。なお、離婚によって親権者でなくなった親であっても、子どもの親であることに変わりはありませんので、親として養育費の支払義務を負います。
離婚の際には、養育費についての取り決め、具体的には、金額、支払時期(毎月○○日等)、支払期間(成人するまで、大学卒業まで等)などをしっかりと決めることが大切です。
面会交流について
離婚によって、親権を持たなくなった親であっても、子の親であることには変わりないので、子どもと連絡したり会うことのできる権利があります。これを面会交流権といいます。
後のトラブルを防止する観点からは、いつどのように面会交流するのか、頻度やスケジュール等を離婚の際に取り決めしておくことをオススメします。
なお、面会交流する権利は、親の権利ですので、一方的に奪うことはできませんが、例えば、子どもに暴力をふるう等、子の福祉にとって悪影響のある場合には、家庭裁判所に申し立てを行うことで面会交流を制限することができます。
おわりに
今回のコラムでは、離婚の際に取り決めておくべき事項について解説しましたが、いかがだったでしょうか。離婚という決断自体、重大な決断でありますし、離婚するのにも、多大な労力と時間がかかり、また、肉体的・精神的な負担も大きなものとなるケースが少なくありません。多大な労力をかけて離婚する以上、後のトラブルをしっかりと予防し、後腐れなくしたいところです。ですので、離婚の際の取り決めは、非常に大切となります。
また、養育費や慰謝料等について取り決めを交わしても、それを証拠として残しておかないと、言った言わないの争いや、不払いがあった場合に結局、泣き寝入りということにもなりかねません。そのような場合に備えて、公正証書を作成することも重要となります。
離婚の際の公正証書について詳しくは、「第15回離婚弁護士コラム 協議離婚の際に公正証書を作成したい理由」で解説しておりますので、そちらをご覧ください。
当事務所では、離婚に関する無料相談を実施しております。多くの離婚案件に携わってきた専門の弁護士が、皆様の離婚後の新しい生活を応援するべく親身になって離婚に際しての条件面や内容面をアドバイスさせて頂きます。離婚に際して取り決めるべき事項で不安のある方は、お気軽に当事務所までご相談ください。